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特定債務者と調停調書

調停調書、一七条決定は、債務名義となるため、提示された調停案について、申立人に返済能力があるかどうかの見極めが大切である。第一回期日までに、相手方から取引履歴が提出されていることが多いが、相手方から提出された取引履歴が取引の途中からのものであったり、また、調停委員による利息制限法に基づく再計算が行われていないことがある。そのため、申立人は調停で提出された取引履歴が取引当初から提出されているかどうか、利息制限法に基づく計算が途中で遅延損害金を加算されているなど不当な計算方法になっていないかどうか、再計算結果を確認することが必要である。

当然ながら、相手方の取引履歴が取引当初から開示されたものではない場合、また、利息制限法による再計算がされていなかった場合には、調停委員にその旨を申し出て、取引当初にさかのぼって取引履歴を相手方から開示させた上で、利息制限法による再計算をし、正しい調停を行うよう促すことが必要である。最近の特定調停では、あらかじめ取引履歴を債務者が取り寄せ、本人による再計算を行った上で、調停案を提示して、調停に臨む申立人も増えている。この方法によれば、取引履歴が簡裁に開示されているかどうか、疑心暗鬼になることはない。また、申立人主導の調停を進めることができるため、取引履歴をあらかじめ取り寄せておくことは利点が多いといえるだろう。

(1)調停の成立
当事者双方が、調停委員会から提示された調停条項案に合意した場合、特定調停は成立する。調停条項案の内容は「特定債務者の経済的再生に資するとの観点から、公正かつ妥当で経済的合理性を有する内容のものでなければならない」(特定調停一七条二項)とされている。例えば、特定債務者の返済能力を超えた返済計画を立てることは認められていない。特定調停においては、①利息制限法による再計算、②将来利息、遅延損害金カット、③長期分割払い、を原則とし、裁判所が返済計画案を調停成立目安として作成し、これを裁判所から申立人・相手方に提案した上で双方が合意をする方法がとられている。

(2)調停に代わる決定
裁判所は、調停が成立する見込みがない場合において、相当であると認めるときは、事件解決のために必要な決定をすることができる。これを調停に代わる決定といい、通常、一七条決定と呼ばれている。現在、全国の簡易裁判所で行われている特定調停手続きにおいては、裁判所の返済計画案に相手方が同意しない場合や相手方である債権者が欠席する場合に、一七条決定が多く利用されている。

(3)調停成立の効果
調停が成立したときは調停調書に記載される。調停調書は裁判上の和解と同一の効力を有する。よって、調停調書は債務名義として執行力をもち、例えば調停条項に特定の給付条項があった場合、強制執行が可能となる。

(4)調停不成立
調停委員会が提示した調停案に対して、相手方が反対して合意ができない場合、一七条決定が発令された以外は、調停は不成立となる。特定調停では、多数の債権者のうち、一部の債権者とは合意を
して調停成立し、一部の債権者は特定債務者の生活再建に非協力的な態度をとったために調停不成立となる場合もある。

(5)調停取下げの注意点
相手方との調停が成立せず、やむを得ず調停を取り下げることもあるが、調停を取下げした場合、調停は最初からなかったものとして扱われる。債権者は改めて債務者に請求を再開することになるので対処法をあらかじめ準備するなど注意が必要である。