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執行停止決定・調停前の措置申立て

(1)民事執行停止手続きが必要となる場合
特定調停において、債権者の債権回収を無制限に認めた場合、特定調停の弁済計画を立てることはできない。そこで、特定調停では、債権者が特定調停中に強制執行ができないよう規定を設置した。これが、民事執行停止手続きの規定である(特定調停七条)。すなわち、「特定調停に係る事件の係属する裁判所は、事件を特定調停によって解決することが相当であると認める場合において、特定調停の成立を不能にし若しくは著しく困難にするおそれがあるとき、又は特定調停の円滑な進行を妨げるおそれがあるときは、申立てにより、特定調停が終了するまでの間、担保を立てさせて、又は立てさせないで、特定調停の目的となった権利に関する民事執行の手続の停止を命ずることができる」と規定している。民事執行停止手続きが必要となるのは、例えば、強制執行認諾付公正証書により金銭消費貸借契約を交わしているケースである。

この場合、債権者が公正証書により給料差押手続きをすることがある。債務者が給料差押えを受けることは、勤務先への信用問題となり、解雇にもなりかねない重大問題であり、特定調停中に給料差押えがあるとすれば、債務弁済計画を立てることが困難となる。また、特定調停では債権者平等の原則から、全債権者に平等に一定割合での弁済が求められるが、特定の債権者の給料差押えを継続的に許すことになれば、債権者の平等が害されることになり、返済計画そのものを成立させることができない。そこで、以上のような公正証書による給料差押えがされている場合には、特定調停法七条の民事執行手続きの停止手続きを利用して、強制執行を無担保で停止させることも可能となる。なお、民事執行停止の中立てには、同法七条に定める民事執行停止の必要性、特定調停による解決可能性について十分な疎明資料が必要となる。

(2)無担保での執行停止
特定調停の申立てをする特定債務者は、通常、生活費、事業資金において、担保を積む余力が残っていない場合がほとんどである。そこで、特定調停法では、執行停止申立規定の中に、「申立てにより、特定調停が終了するまでの間、担保を立てさせて、又は立てさせないで」民事執行の手続きの停止を命ずることができる、として、特定調停においては、無担保で執行停止ができる規定を設置した(特定調停七条)。特定調停実務でも、ほとんどが無担保や保証金なしでの執行停止決定がされている。特定調停法七条では原則として、保全処分における担保と同様に、担保を立てることを平行して規定しているが、特定調停では特定債務者の経済的再生を考慮して、ほとんどの場合に無担保による民事執行停止を認めていることは、従来の執行停止手続きからみて画期的といっていいだろう。