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調停前の措置申立てが必要となる場合

商工ローン業者が手形を担保として保持している場合、業者が手形を取立てに回すということになれば、申立人において手形不渡りを免れることができず、事業の倒産にかかわることがある。よって、手形の不渡りを止める手続きとして、「相手方は、上記当事者間の御庁平成○年(特ノ)第○○号特定調停事件が終了するまで、別紙約束手形目録記載の約束手形を支払場所に呈示して権利を行使し、または裏書譲渡その他一切の処分をしてはならない。第三債務者は、別紙約束手形目録記載の約束手形に基づき、相手方に対して支払いをしてはならない」とする調停前の措置命令が必要となる。

調停前の措置命令は、手形の処分禁止の仮処分手続きと同様の効果を無担保で得ることが可能である。調停の事前措置が一般的になったことにより、手形をとっている業者の中でも、代理人からの申出のみで、業者が手形の返却に応じるケースも増えている。このような労力をかけない手形返却が可能となるためにも、簡裁での取扱いを定着させることが必要である。また、手形の処分禁止に限らず、調停の成立およびその執行を保全するために必要な行為であれば、あらゆる命令が発令される可能性がある。

よって、担保が必要となる民事調停規則六条による民事執行停止申立てにおいて保証金の準備ができない場合の補完的対応策として利用することが可能である。調停前の措置命令は、以前はあまり利用されているとはいえない状態であったが、調停内で紛争の解決を図るという趣旨から、商工ローン問題で債務者が振り出した手形や小切手の呈示を無担保で止めることができるようになり、次第に調停前の措置命令を利用する人が増えてきている。この手続きを利用するメリットとしては、保証金が不要、つまり無担保での発令が可能であることがあげられる。

例えば、従前、商工ローン問題で債務者が振り出した手形や小切手の呈示を止めるために「処分禁止の仮処分手続き」が多用されていた。しかし、通常手形額面の一〇%から二〇%の保証金が必要となり、例えば額面一千万円の手形を振り出している場合には一〇〇万円から二〇〇万円の保証金が必要となるため、これら保証金の調達が困難な特定債務者がほとんどであった。これに対し、特定調停では、調停前の措置命令が発令される際に保証金は不要である。