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調停前の措置申立てとは

(1)概要
民事調停法一二条は、「調停委員会は、調停のために特に必要があると認めるときは、当事者の申立により、調停前の措置として、相手方その他の事件の関係人に対して、現状の変更又は物の処分の禁止その他調停の内容たる事項の実現を不能にし又は著しく困難ならしめる行為の排除を命ずることができる」と定めている。調停前の措置とは、調停委員会が、当事者の申立てから調停が終了するまでの間、仮の措置として相手方その他事件の関係人に対して命ずることができる、調停成立に必要と認められる保全的措置のことをいう。

調停前の措置は、民事保全法における仮処分のように債務名義となるものではなく執行力がない。よって相手方に強い拘束力をもつことはなく、調停前の措置命令を債務名義として、命令内容の実現を強制することはできず、相手方がこれに従わない可能性もあるが、実務上はほとんどの業者がこれに従っている。また、参加人以外に強制手段がなく、利害関係人に対して調停前の措置命令が発せられたとしても、参加人ではない利害関係人には何らの強制手段も用意されていないという点には注意が必要である。調停前の措置発令後は、有担保の債権者も無担保である債権者の特定調停と同じ取扱いで進めることになる。

(2)民事執行手続きの停止期間
民事執行手続きの停止期間は特定調停が終了するまでの間とされている。特定調停が終了または不調となった場合には、民事執行停止手続きも終了し、執行停止手続きの効力も終了する。

(3)民事執行停止申立てをするにあたっての注意点
民事執行停止命令が発令された場合には、代理人から決定書を直接相手方に送付して和解交渉を優位に進める努力が必要である。通常、大手貸金業者の場合は、裁判所の命令を無視して給料差押えを継続することはほとんどない。例えば、代理人が任意整理手続きをする場合に、債権者が強制執行をしてきたとき、特定調停申立てをし、民事執行停止の申立てをした上で、代理人が債権者と任意整理手続きを行うことも、債務整理手段として有効である。

民事執行手続きの申立方法

(1)申立書・添付書面
特定調停申立てと同時、もしくは特定調停申立後直ちに、民事執行停止の必要性を証明するため、次の事項を明らかにする書類を提出して申立てをする(特定調停規三条)。

(a)民事執行手続きのために提出する書類
①「当該民事執行の手続の基礎となっている債権または担保権の内容」
判決・公正証書などの債務名義などがこれに当たる。

②「前号の担保権によって担保される債権の内容」
登記事項証明書、金銭消費貸借契約書などがこれに当たる。

③「当該民事執行の手続の進行状況」
差押命令正本、執行裁判所からの通知書などがこれに当たる。

④「特定債務者の調整に関する関係権利者の意向」
差押債権者の分割弁済案に対する考え方などがこれに当たる。

⑤「調停が成立する見込み」
家計簿、金銭出納帳、陳述書などがこれに当たる。

(b)強制執行停止決定申立書記載例を掲載する。申立書には、強制執行の停止を求めること、また、その理由につき記載する。

(2)関係当事者への審尋
特定調停の係属する裁判所は、民事執行停止の申立てがあった場合において、必要があると認めるときは、当該民事執行の申立てをしている関係権利者を面談によって聴き取り調査をする(特定調停規三条二項)。これは、民事執行の手続きの停止を命ずることが適当かどうか、担保が必要かどうかなどを検討するためである。無担保での強制執行停止決定が発令された場合の記載例を掲載する。

民事執行の停止を命ずることができる場合とは

特定調停法では、民事調停規則において認められていた民事執行停止手続きの要件を緩やかにしている(特定調停七条)。

(1)「事件を特定調停によって解決することが相当であると認める場合」
特定債務者の債務状況、収入から判断し、特定調停により経済的に立ち直ることが十分可能であると判断できる場合には、執行停止決定が発令される可能性が大きい。ただし、仮に執行停止をしたとしても調停成立が見込まれない場合には、執行停止決定が下されることはない。

(2)「特定調停の成立を不能にし若しくは著しく困難にするおそれがあるとき」
債権者が強制執行を行うことにより、債務者の生活基盤、事業基盤が脅かされるおそれがあり、民事執行手続きの停止を認めることが調停成立に必要とされる場合には、執行停止決定がされる可能性が大きい。とりわけ、生活や事業の拠点である住居が強制執行された場合には、調停の目的である債務弁済そのものが困難となるため、これら不動産に対する強制執行の停止をすることが可能である。

(3)「特定調停の円滑な進行を妨げるおそれがあるとき」
債権者が、債務弁済調停に応じず、債権回収のために強制執行するという強行な姿勢に出た場合、すなわち、調停の進行そのものが妨害される場合には執行停止決定が可能である。

執行停止決定・調停前の措置申立て

(1)民事執行停止手続きが必要となる場合
特定調停において、債権者の債権回収を無制限に認めた場合、特定調停の弁済計画を立てることはできない。そこで、特定調停では、債権者が特定調停中に強制執行ができないよう規定を設置した。これが、民事執行停止手続きの規定である(特定調停七条)。すなわち、「特定調停に係る事件の係属する裁判所は、事件を特定調停によって解決することが相当であると認める場合において、特定調停の成立を不能にし若しくは著しく困難にするおそれがあるとき、又は特定調停の円滑な進行を妨げるおそれがあるときは、申立てにより、特定調停が終了するまでの間、担保を立てさせて、又は立てさせないで、特定調停の目的となった権利に関する民事執行の手続の停止を命ずることができる」と規定している。民事執行停止手続きが必要となるのは、例えば、強制執行認諾付公正証書により金銭消費貸借契約を交わしているケースである。

この場合、債権者が公正証書により給料差押手続きをすることがある。債務者が給料差押えを受けることは、勤務先への信用問題となり、解雇にもなりかねない重大問題であり、特定調停中に給料差押えがあるとすれば、債務弁済計画を立てることが困難となる。また、特定調停では債権者平等の原則から、全債権者に平等に一定割合での弁済が求められるが、特定の債権者の給料差押えを継続的に許すことになれば、債権者の平等が害されることになり、返済計画そのものを成立させることができない。そこで、以上のような公正証書による給料差押えがされている場合には、特定調停法七条の民事執行手続きの停止手続きを利用して、強制執行を無担保で停止させることも可能となる。なお、民事執行停止の中立てには、同法七条に定める民事執行停止の必要性、特定調停による解決可能性について十分な疎明資料が必要となる。

(2)無担保での執行停止
特定調停の申立てをする特定債務者は、通常、生活費、事業資金において、担保を積む余力が残っていない場合がほとんどである。そこで、特定調停法では、執行停止申立規定の中に、「申立てにより、特定調停が終了するまでの間、担保を立てさせて、又は立てさせないで」民事執行の手続きの停止を命ずることができる、として、特定調停においては、無担保で執行停止ができる規定を設置した(特定調停七条)。特定調停実務でも、ほとんどが無担保や保証金なしでの執行停止決定がされている。特定調停法七条では原則として、保全処分における担保と同様に、担保を立てることを平行して規定しているが、特定調停では特定債務者の経済的再生を考慮して、ほとんどの場合に無担保による民事執行停止を認めていることは、従来の執行停止手続きからみて画期的といっていいだろう。

特定債務者と調停調書

調停調書、一七条決定は、債務名義となるため、提示された調停案について、申立人に返済能力があるかどうかの見極めが大切である。第一回期日までに、相手方から取引履歴が提出されていることが多いが、相手方から提出された取引履歴が取引の途中からのものであったり、また、調停委員による利息制限法に基づく再計算が行われていないことがある。そのため、申立人は調停で提出された取引履歴が取引当初から提出されているかどうか、利息制限法に基づく計算が途中で遅延損害金を加算されているなど不当な計算方法になっていないかどうか、再計算結果を確認することが必要である。

当然ながら、相手方の取引履歴が取引当初から開示されたものではない場合、また、利息制限法による再計算がされていなかった場合には、調停委員にその旨を申し出て、取引当初にさかのぼって取引履歴を相手方から開示させた上で、利息制限法による再計算をし、正しい調停を行うよう促すことが必要である。最近の特定調停では、あらかじめ取引履歴を債務者が取り寄せ、本人による再計算を行った上で、調停案を提示して、調停に臨む申立人も増えている。この方法によれば、取引履歴が簡裁に開示されているかどうか、疑心暗鬼になることはない。また、申立人主導の調停を進めることができるため、取引履歴をあらかじめ取り寄せておくことは利点が多いといえるだろう。

(1)調停の成立
当事者双方が、調停委員会から提示された調停条項案に合意した場合、特定調停は成立する。調停条項案の内容は「特定債務者の経済的再生に資するとの観点から、公正かつ妥当で経済的合理性を有する内容のものでなければならない」(特定調停一七条二項)とされている。例えば、特定債務者の返済能力を超えた返済計画を立てることは認められていない。特定調停においては、①利息制限法による再計算、②将来利息、遅延損害金カット、③長期分割払い、を原則とし、裁判所が返済計画案を調停成立目安として作成し、これを裁判所から申立人・相手方に提案した上で双方が合意をする方法がとられている。

(2)調停に代わる決定
裁判所は、調停が成立する見込みがない場合において、相当であると認めるときは、事件解決のために必要な決定をすることができる。これを調停に代わる決定といい、通常、一七条決定と呼ばれている。現在、全国の簡易裁判所で行われている特定調停手続きにおいては、裁判所の返済計画案に相手方が同意しない場合や相手方である債権者が欠席する場合に、一七条決定が多く利用されている。

(3)調停成立の効果
調停が成立したときは調停調書に記載される。調停調書は裁判上の和解と同一の効力を有する。よって、調停調書は債務名義として執行力をもち、例えば調停条項に特定の給付条項があった場合、強制執行が可能となる。

(4)調停不成立
調停委員会が提示した調停案に対して、相手方が反対して合意ができない場合、一七条決定が発令された以外は、調停は不成立となる。特定調停では、多数の債権者のうち、一部の債権者とは合意を
して調停成立し、一部の債権者は特定債務者の生活再建に非協力的な態度をとったために調停不成立となる場合もある。

(5)調停取下げの注意点
相手方との調停が成立せず、やむを得ず調停を取り下げることもあるが、調停を取下げした場合、調停は最初からなかったものとして扱われる。債権者は改めて債務者に請求を再開することになるので対処法をあらかじめ準備するなど注意が必要である。

システム金融と非人間的な暴力的・脅迫的取立ての横行

システム金融は、中小零細事業者を対象とするヤミ金融業者で、手形や小切手を担保に取って出資法違反の超高金利で貸し付ける。システム金融は、中小零細事業者に手形や小切手を送らせるときは、郵便局の局留めで送らせて自らの住所を把握されないようにしている。中小零細事業者は手形や小切手が不渡りになると会社が倒産してしまうので、担保に取られた手形や小切手を決済するためにまたほかのシステム金融に手を出すことになるのである。システム金融業者に手を出した中小零細事業者に対して、次々と貸し付けるシステム金融業者はいずれも同一グループに属するシステム金融業者である。システム金融は、中小零細事業者の中でも特に日栄(現ロプロ)や商工ファンド(現SFCG)などの商工ローンから債務を抱えている中小零細事業者をターケットとしている。

システム金融は、摘発を逃れるため電話番号や住所を頻繁に変更している。また、ほとんどのシステム金融は無登録で営業を行っている。前述した全国ヤミ金融対策会議の「全国一斉ヤミ金融一一〇番」の集計結果によると、システム金融の占める割合は一%であった。ヤミ金融は犯罪者集団なので、法的手続をとって債権回収をするようなことはせず、もっぱら暴力的・脅迫的取立てを債権回収の主たる手段としている。大体ヤミ金融の事務所では、マンションの一室に電話を一〇台くらい並べて、朝から晩まで払わなければ「殺す」「家に火をつける」「子どもをさらう」などと脅迫的電話をかけて債権回収を行っている。

ヤミ金融の取立ては、借主本人だけでなく、借主の家族・親族・近隣住民・勤務先・子どもの通う小、中学校などに及んでいる。勤務先の会社に対しヤミ金融の取立てが行われると、犯罪者集団であるヤミ金融と闘うのではなく、働いている労働者を解雇するという会社が多いのが現状である。また、借主の家族や親族・近隣住民に対しヤミ金融の取立てが行われると、借主は、家族や親族・近隣住民から苦情を言われることになる。ヤミ金融の被害者は、ヤミ金融業者からだけでなく会社からも親族からも近隣住民からも、「あんたのためにこんなひどい目に遭った」「何とかしてくれ」と苦情を言われるため、責任を感じるとともに孤立してしまい、徐々に精神的に追い込まれていくことになる。