記事一覧

貸金業界の最近の動向

(1)大手サラ金業者の大半が貸出金利を前倒しして引下げ
新貸金業法の完全施行後は、出資法の上限金利が年二九・二%から年二〇%に引き下げられるとともに、みなし弁済規定(グレーゾーン金利)が撤廃され、利息制限法の制限金利を超える利息契約が禁止されることになっているが、大手サラ金業者の大半は、新貸金業法の完全施行をまたず、貸出金利を利息制限法の制限金利以下に引き下げて営業する状況となっている。

(2)登録貸金業者数の減少
金融庁がまとめたところによると、財務局や都道府県知事に貸金業登録をしている貸金業者は、二〇〇九年三月末時点で、一万社を大きく割り込んで六、一七八社となっていることが明らかとなっている。貸金業登録をした貸金業者数は、一九九八年三月末時点では三万一四一四社あったが、その後、ヤミ金融対策法や新貸金業法が成立し貸金業規制が強化されたため業者減少傾向が加速し、この一〇年間で五分の一以下に減少したことになる。今後、新貸金業法により、金利規制、総量規制、財産的基礎要件の引上げなどの完全実施が予定されているため、貸金業の登録業者数は、さらに減少することが予測されている。

(3)中堅サラ金業者・商工ローン業者の倒産
新貸金業法による金利規制や貸金業規制の大幅強化、過払金返還請求の増加などの影響を受けて、倒産するサラ金業者が増えてきている。特に、中堅サラ金業者のクレディアが二〇〇七年九月一四日、また、アエルが二〇〇八年三月二四日、いずれも東京地方裁判所に民事再生の申立てをして事実上倒産するなど、中堅サラ金業者の倒産が目立つようになってきている。また、東京地方裁判所において、二〇〇九年四月二一日には、商工ローンの大手SFCG(旧商工ファンド)の破産手続開始決定がなされ、同年六月四日には、同社元社長大島健伸の破産手続開始決定がなされている。さらに、レイクやCFJなどアメリカ系サラ金の撤退や売却の動きも出てきている。

(4)貸金業者の海外進出
わが国において、金利規制や貸金業規制が強化されてきているため、わが国のサラ金業者が規制のない海外へ進出するケースが目立っている。特に、金利規制が一時撤廃され、その後多重債務問題が深刻な社会問題となったため再び金利規制を復活させたわが国と比較してまだまだ金利規制が緩やかな韓国に対しては、一九九八年頃より日本のサラ金の進出が目立っている。

(5)ヤミ金融の動向
二〇〇二、二〇〇三年当時は、都道府県知事の貸金業登録をしたヤミ金融業者が圧倒的多数を占めていたが、その後、ヤミ金融に対する罰則を強化したヤミ金融対策法の成立(二〇〇三年七月二五日)、新貸金業法の成立(二〇〇六年一二月一三日)、山口組五菱会系ヤミ金融事件グループの摘発と山口組本部捜索(二〇〇三年)によって、摘発を恐れたヤミ金融融業者は貸金業登録をやめ、現在では無登録の「非対面型○九〇金融」が圧倒的多数を占めている。また、ヤミ金融に対する取締り・摘発の強化が進んだため、二〇〇三年頃よりヤミ金融グループの一部が振込め詐欺(オレオレ詐欺、架空請求詐欺、融資保証金詐欺、還付金詐欺など)に移行している。ただし、新貸金業法の金利規制と総量規制の完全実施が予定されているため、多重債務者に対するサラ金業者の貸渋り、貸剥がしが増えることにより、もし警察によるヤミ金融の取締りが強化されなければ、今後、ヤミ金融被害が再び増える危険性がある。

暴力団の資金源となっているヤミ金融

ヤミ金融の大半は、暴力団の資金源になっている。二〇〇二年末から二〇〇三年にかけて広島県警や警視庁により、山口組系五菱会系のヤミ金融グループが摘発された。二〇〇三年八月一一目にはこのグループを統括していた最高責任者で「ヤミ金の帝王」と呼ばれていた梶山進が出資法違反容疑で警視庁に逮捕され、一〇月二四目には山口組総本部の捜索も行われている。また、二〇〇三年一一月二六日には五菱会の高木康男会長が組織的犯罪処罰法違反(犯罪収益収受)容疑で警視庁と静岡・広島県警などの合同捜査本部によって逮捕され、五菱会は事実上解散している。

梶山が組織したヤミ金融グループは、最盛期一千店もの店舗を持ち、年間一千億円の収益を上げ、山口組系暴力団に収益金を上納していたとみられている。梶山は、名簿業者から入手した多重債務者の名簿を基にダイレクトメールや電話で全国的に勧誘し、顧客とは顔を合わせないで融資し返済を受ける「非対面型」の営業方法を考案し、多重債務者に傘下のヤミ金融業者を紹介し次々と貸し付けるというヤミ金融の手口の創始者であるといわれている。梶山らは、就職情報誌の金融・ファイナンス部門で「茶髪OK・ピアスOK」「月給二七~五〇万円、店長昇進で月収一八〇万円以上可能」などと広告宣伝して従業員を募集し、就職情報誌を見て応募してきた若者らに東京都知事の貸金業登録を取らせていた。

梶山は、就職情報誌を見て応募してきた従業員に開業させたヤミ金融の店舗の一〇店から二〇店を一グループとした組織を二〇以上も作り上げ、その頂点に君臨していたということである。つまり、山口組系五菱会系のヤミ金融グループといっても、末端でヤミ金融の営業をやって悪質な取立てを繰り返していたのは普通の若者で、暴力団の構成員ではなかったということである。山口組系五菱会系のヤミ金融グループの摘発によって、ヤミ金融が反社会的集団である暴力団の資金源となっていることが、ますます明らかになったと言える。

二〇〇八年六月一〇日、最高裁第三小法廷は、山口組系旧五菱会のヤミ金融事件に関し、「出資法に違反するヤミ金融の貸付行為は、社会の倫理、道徳に反する醜悪な行為(反倫理的行為)であり、民法七〇八条の不法原因給付に該当するので、ヤミ金融は貸付金元本の返還を求めることができないばかりか、被害者がヤミ金融に支払った金銭の返還請求をする場合、元本部分を差し引く(損益相殺する)こともできない」という画期的な判断を示した。これまでは、例えば、被害者がヤミ金融から一〇万円借りて一〇〇万円返還した場合、一〇〇万円全額の返還請求ができるのか(全額説)、借入元金一〇万円を差し引いた九〇万円の返還請求しかできないのか(差額説)の争いがあり、下級審では判断が分かれていた。

今回の最高裁の判決は、元金の返済も不要とする全額説に立った判断を示したわけであり、まさにヤミ金融の息の根を止める判決であるといえる。ヤミ金融の被害者が警察に相談にいった場合、これまで現場の警察官の中には、「借りた金は返すべきだ」というような対応が目立っていた。このような警察官の誤った対応が、被害者を苦しめるとともにヤミ金融を助長させる大きな要因になっていた。今回の最高裁判決は、ヤミ金融の「元金」はおよそ法的保護に値せず、いかなる名目であれ、ヤミ金融が被害者に金銭の支払いを要求する権利を持たないことを明らかにしたわけなので、「借りた金を返せ」という警察官の対応は、最高裁判決に反し、明らかに誤った対応ということになる。

ページ移動